以前、「働き方改革」に関する講演会の講師を務めたところ、ご参加されていた従業員の方から、「働き方改革は従業員からすると、いいことばかりのように感じますね!」という言葉をかけられたことがありました。
しかし、現実は、そう単純な話ではありません
なぜなら、労働時間が短くなっても業務量は同じ(もしくは同等以上)で売上や利益を出すことが必須となり(いわゆる生産性の向上)、従業員も個々人の能力を向上することが必要不可欠となるからです。
会社は、働き方改革をキカッケとして、「IT化」「業務改善」「生産性向上」に積極的に取り組んでおり、結果として、人手が従来ほどは必要なくても業務が回る環境作りを目指しています。
従って、従業員としても、人手不足だからといって自己研鑽を怠っていると、あっという間に時代に取り残されるリスクがあります
また、働き方改革は、企業にとっては負担も重いのが現実です(有給の取得義務化や月60時間を超える割増率25%⇒50%へのアップなど)。
合わせて毎年最低賃金も上がっていますので、今は人手不足といわれていますが、雇用のリスクを鑑みると、今後はできるだけ雇用をしない、という選択肢も増えていくのではないかと感じます。
また、売り上げ重視から利益重視へのシフトによる、事業規模の縮小という選択も出てきていますので、雇用もスリム化していく可能性もあります。
そもそも国としては、働き方改革を通して、少子化の原因の1つと考えられる、全体の40%近くの割合を占めている非正規雇用の従業員を正社員化して安定した雇用をしてほしい、という目的もあります。
しかしながら、実際の中小企業では国の思惑とは別の方向・・・すなわち、できるだけ人を雇用しないで済む方法(優秀なフリーの個人事業主と契約するなど)に動いているところも出てきています。
また、別の気になるデータの一つに、利益が出ている企業の希望退職が増えているということが上げられます。すなわち未来を見据えて、利益が出ているうちに、現在の雇用を見直し、スリム化して次世代に備えています。
だからこそ、従業員にとっても、働き方改革は変化のタイミングです。
決して冒頭のご質問のように、働き方改革は従業員にとっていいことばかりではなく、厳しい外部環境において変化が求められているという自覚が必要になってきます。
もちろん、生産性向上のためには企業として人材育成は必要不可欠ですが、人生100年時代と言われている現代では、企業のお膳立てに頼らない、1人1人の能力アップ、自己研鑽が必須な時代であることは間違いありません。
今後は、従業員にも二極化が進むことでしょう。ランサーズなどのクラウドサービスなどの後押しもあり、優秀な人材は雇用を選択せず、フリー(個人事業主)で活動し、プロジェクト単位で仕事を掛け持ちしています。
変化が求められる現代において、経営者と従業員との意識のギャップを以前より強く感じますが、共倒れにならないためにも、働き方改革をキッカケに、企業として、従業員として、1人1人が役割を果たしできることを実践していくことがwin-winになるのではないでしょうか。
生き残りが厳しい時代を、企業と従業員が力を合わせて乗り越えていく、働き方改革はそのキカッケになる取り組みなのかもしれません