建設業における働き方改革を進めるためには、労働時間の削減が必須ですが、その前にぜひ行っていただきたいのが「移動時間」の見直しです。
建設業では工事現場への移動が不可欠であるため、労働時間の定義とその取扱い方法が意外と不明確なケースが多く、まずはここを明確にする必要があります。
例えば、自宅から現場までの移動時間について。
一般的には、自宅から現場までの移動時間は「通勤時間」となるため、労働時間には含みません。また、自宅から会社事務所への移動も同様に「通勤時間」に該当し、労働時間には含まれません。
それでは、会社事務所から現場までの移動時間はどのような取扱いになるのでしょうか。
これについては、原則は「労働時間」として扱いますが、一定の要件を満たした場合は「通勤時間」として取り扱うことが可能です。
具体的には、従業員が会社事務所に集合することが義務付けられている場合、この場合は「労働時間」に該当します。また、あわせて移動中に業務に関するミーティングや指示が行われる場合も、「労働時間」と判断されます。
したがって、移動時間を労働時間に含めないためには、事務所への集合はあくまで任意であり、移動中は従業員が個人の自由な時間として利用できるような配慮が必要です。
また、集合場所と現場への移動時間は、原則として「通勤時間」と判断されます。例えば自宅から集合場所に自家用車等で向かい、そこから社有車で乗り合いにより従業員が運転し現場へ移動車中で業務は行っていない場合は「通勤時間」に該当し、労働時間には含まれません。
※移動時間についての詳細は下記パンフレットで確認が可能です!
厚生労働省資料「事務所と現場の移動時間を見直してみませんか」
このような取り扱いを明確にするためには、就業規則において移動時間の扱いを具体的に規定しておくことをお勧めします^^
弊社でも、建設業の会社様からの就業規則のご相談に対しては、移動時間の取扱い規定をご提案させていただいています!規定化することで、従業員の方と認識のギャップを防ぎ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
実際に、例えばある建設業の会社様にて、従業員様の就業規則の説明会を行った際には、
「遠方の現場に行くために早朝から家を出るのに、それが労働時間に含まれないのは不公平ではないか?」
という質問をいただく機会がありました。
確かに、早朝からの移動が必要な場合、その時間が労働時間に含まれないのは不公平に感じるかもしれません。ですが、上記で説明しているように、法律上、通勤時間として取り扱うことが可能ですので、労働時間に含めなければならないわけではありません…
このようなケースでは、実務的な解決方法として、出張手当や日当を支給するということがあげられます。出張手当や日当を支払うことで、従業員が感じる負担を軽減し、働き方改革を進める中での不満を解消することが可能です。
建設業における労働時間削減のためには、まずは法的な要件をクリアにした上で、どこまでを労働時間として取り扱うかを今一度見直すことが大事です。
まずは現状の把握を行い、その上で具体的な取り組みを進めることから、ぜひ始めて見てください!